最高裁判所第二小法廷 昭和37(オ)804 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人網野久治の上告理由序論、第一点について。
原審は、Dが本件土地家屋の持分二分の一を上告人に贈与した旨の上告人主張事
実は、証拠によつては認められないだけでなく、却つて、Dが右土地家屋を亡Eに
贈与した事実が認められる旨判示しているのであつて、右事実認定は、挙示の証拠
により是認できる。論旨は、理由不備などをいうが、その実質は、ひつきよう、原
審の右事実認定を非難するに帰するものであつて、採用できない。
同第二、三点について。
原審は、証拠によつて、昭和一〇年八月頃、Dが本件土地家屋を亡Eに贈与する
旨意思表示をなし、亡Eにおいてこれを承諾する旨の意思表示をなした事実を認定
していることが、判文上明らかである。そして、右の認定は挙示の証拠により是認
できる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、原判決を正解せざるものであつて、
採用できない。
同第四点について。
諸般の証拠を総合してある事実を認定するに際し、その用に供せられた証人の供
述中に認定事実に反する趣旨の部分が存在していても、その部分を証拠として採用
しなかつたことを判文上明示しなければならないものではなく、その供述内容と判
文の認定事実とを対照して、どの部分を採用しどの部分を排斥したものであるかが
了知できれば足りるである。そして、原審が、所論証言中所論の部分を採用しなか
つたものであることは、原判文からこれを了解しうるのであるから、原判決に所論
の違法はなく、論旨は採用できない。
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同第五点について。
原審は、上告人主張の持分贈与の事実は認められないが、仮に右事実が認められ
るとしても、亡EにおいてもDから本件土地家屋所有権の贈与をうけたのであるか
ら、上告人において前記持分につき移転登記を経由していない以上、右持分取得を
もつて亡Eの相続人である被上告人らに対抗できない旨判示しているのであつて、
正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用できない。
同第六、七点について。
原審は、原判決理由第一(二)(1)ないし(4)の事実を確定し(記録七二四
頁)、右事実によれば、却つて、上告人において本件土地家屋を「所有の意思をも
つて」占有していたものでないことを推定せしめるに足りる旨判示しているのであ
つて、原審の右事実認定ないし判断は、挙示の証拠にてらし是認できる。論旨は、
独自の見解にたち原審の右事実認定ないし判断を非難するに帰するものであつて、
採用できない。
同第八、九点について。
原審は、甲第二九号証ないし第三一号証は判示の経緯及び目的のために作成され
たものであつて、被上告人ら(参加人を除く)において、本件土地家屋が上告人の
所有に属することを認める趣旨で作成されたものではないから、同号証によつて上
告人主張の和解契約の成立を認めることはできないし、他にこれを認めるに足る証
拠はない旨を判示していることが判文上明らかであり、右の認定は挙示の証拠によ
り是認できる。所論は、理由不備、採証法則違背、経験則違背などをいうが、その
実質は、原審のなした右事実認定を非難するか、または、前記契約が成立したこと
を前提とする主張であつて前提を欠き、いずれも採用できない。
同第一〇点について。
原審は、参加人は自己の事業経営の必要に基き本件土地家屋を被上告人らから買
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いうけたのであり、上告人を本件家屋から退去させることを目的として買いうけた
のではないから、参加人の右行為が公序良俗に反し権利濫用であるとは認められな
い旨を判示しているのであつて、原審の右判断は正当である。論旨は、独自の見解
にたち、原審の認定しない事実に基き、原判決を非難するものであつて、採用でき
ない。
同第一一点について。
原審は、上告人は被上告人らに代位し参加人の本件土地家屋売買契約の債務不履
行を理由に参加人と被上告人ら間の右契約解除を主張するものであるところ、参加
人が代金支払債務について遅滞にあるとは認められないから、その余の点について
判断するまでもなく上告人の右主張は理由がない旨判示していることが明らかであ
る。原判決に理由不備の違法はなく、論旨は採用できない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 奥 野 健 一
裁判官 山 田 作 之 助
裁判官 草 鹿 浅 之 介
裁判官 城 戸 芳 彦
裁判官 石 田 和 外
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